家庭用の針脱毛器について |
2009/02/11 |
80〜90年代、まだレーザー脱毛が普及する前は、永久脱毛と言えば針脱毛(ニードル脱毛)しかありませんでした。
今でも確実な永久脱毛と言えば針脱毛なのは皆さんご存じの通りです。
人に見られたくない部位の毛を自宅で誰にも知られずに永久脱毛したい、というのはごく普通にあることです。当時、家庭用には「高周波脱毛器」というインチキ商品が氾濫していましたが、数少ない家庭用の針脱毛器がありました。私の記憶では少なくとも2社ありましたが、私が使用したのは一つだけですのでそれについて書きます。
その針脱毛器は米国のインバネス(Inverness)社のもので、“One Touch Home Electrolysis”というものでした。日本では、ベターライフ株式会社という所が輸入販売していました。商品名は、「ワンタッチ・エレクトロ・ビューティ」でした。(今では販売されていません)
ベターライフ社(現 イノベイション株式会社)の沿革 https://www.innovation-corp.co.jp
また、その後 2000年頃までこの針脱毛器は株式会社シービックという所から「ソラール エレクトロニック脱毛器」という商品名で販売されていたようです。(これも現在では販売されていません)
インバネス社も現在では脱毛器を販売していませんが、今でもこの商品は American International Industries という会社から継続して製造販売されています。
販売ブランドとして“One Touch”ブランドと“clean + easy”ブランドの2つがあるようです。
私は以前ベターライフ社からこの商品を買い、ずっと使ってきました。最近はもうムダ毛がほとんどないので登場する機会もほとんどなかったのですが、時々忘れていたかのように変なところに生えてくる毛を脱毛するのに使ったりしていました。まだまだ十分使える状態ですが、最近予備をと考えて後継機種を個人輸入で購入しました。それで、自分で針脱毛をしたいと思う方の参考になればと思ってこの機械について書くことにします。
現在日本で売っていない家庭用針脱毛器ですが、昔とまったく同じ機械が現在でも海外では販売されています。
もう30年近く継続している息の長い商品です。日本から入手するには、海外の通信販売サイトを利用します。
買い物のしかたは日本の通信販売サイトと同じですから、高校程度の英語を読める人ならそれほど苦労せず購入できると思います。
ただし、海外発送をしてくれるサイトを選ぶ必要があります。“Shipping”や“Delivery”(配送)の項目に、“International”とか“Worldwide”と書いてあるか確認しましょう。
私がかつて購入した「ワンタッチ・エレクトロ・ビューティ」と最近英国から購入した“One Touch Home Electrolysis”の写真です。
写真:「ワンタッチ・エレクトロ・ビューティ」(左)と“One Touch Home Electrolysis”(右) (クリックで拡大)
昔のものの方がケースが大きく、毛抜きがセットになっていますが、本体機能は少しも変わっていません。電極を収めるプローブはまったく同じです。操作部は電流調節のダイヤルがあるだけのシンプルなものです。電源は9ボルトの角形電池です(電器店でも売っています)。アルカリ乾電池タイプが長持ちします。消費電力は小さく、普通に使っても一年以上もちます。ただし使わないときに乾電池を入れっぱなしにするとかなり早期に放電してしまうので、使わないときは乾電池のソケットを外しておきましょう。製品には試供品のマンガン乾電池が付属していますが、念のため新品の電池を買うことをお勧めします。
(現在、写真の小型のタイプは販売終了した模様)
動作原理は簡単で、毛と同じくらいの太さの細いステンレス製の電極(先のとがっていない針金)をムダ毛に沿って毛穴に差し込み、弱い直流電流を数秒間流すと、毛穴の中の水分が電気分解されてアルカリ性になり、毛根を死滅させるというものです。電流を流している間、ピリピリとした痛みを感じます。
電流を流し終わるとブザー音が止むので電極を引き抜き、毛抜きのピンセットで毛を引き抜きます。毛穴の周囲が少し腫れますが、数時間で腫れは引きます。一本一本処理しなければならないので、根気がいります。同じ姿勢でずっと作業を続けていると首や腕や背中がつってくるでしょう。慣れた人でも一時間で200本くらいが限度と思います。フレキシブルアームのついた拡大鏡があると便利です。最近はハイビジョン(HD)ビデオカメラが安くなり接写機能が秀逸で、HDMI ビデオ入力のある大画面モニタに映すと肌の細部まで見えることに驚きました。こういうものが昔あればなぁ、と感慨深いものがあります。いずれにせよ明るい照明は必須です。スタンドライトを用意してください。
使い方のコツをいくつか挙げます。
針(電極)は細い針金で曲がりやすいので慎重に扱います。スライドレバーで電極を出し入れすることができるので、使わないときは引っ込めておきます。予備の針は1本だけ本体に付属しています。
針は多少曲がった位ならプローブから外して付属のピンセットで直せます。私も何度か曲げてしまってそのつど直したので、針は微妙にうねっています。それでもこれまでずっと最初の針で使用してきました。予備の針は未使用のままです。
針をうまく毛穴に挿入するには、毛の生えている向きに沿って、毛の下側に沿わせるように差し込みます。毛が長くて邪魔な場合は、毛抜きでつかめる程度まで短く切っておくとよいでしょう。脱毛処理後に毛を抜く必要があるので毛を剃っておくことはできません(剃ると毛穴の位置が分からなくなるし針も差し込みにくくなります)。成長期の毛を脱毛処理してから引き抜くと、毛の根元に透明なゼラチン質のさや(毛根鞘)がついたまま容易に抜けてきて、永久脱毛の効果が実感できます。以後その毛穴からは生えません。陰毛などでは一つの毛穴から2本あるいは3本の毛が生えていることがあります。これは複数の毛根が一つの毛穴を共有している状態で、毛の向きが異なっていることに注意してそれぞれ処理する必要があります。ただし電流の流し過ぎには注意してください。
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毛がかなり太くて長いのに、針が毛穴にほとんど入っていかないことがあります。これは成長が終わった毛(毛周期の中で退行期〜休止期(休眠期)に入った毛)で、毛根を包む毛穴全体(毛包)が毛乳頭から分離して縮小し、毛の根元が白くて固い棍棒のような状態(棍毛:こんもう)になって毛穴の浅い位置に固着しているからです(右図)。固着はとても強く、少々引っ張ったくらいでは抜けません。強く引っ張って抜くと、先が白くて硬くて毛穴の浅い位置から切れたように見えます(成長期の毛は、スムーズに伸びるように毛根鞘で包まれていて、毛根が長いのに比較的簡単に抜け、先が柔らかい)。根本が白いのは、毛を作る細胞よりメラニン色素を作る細胞が先に活動をやめるからです。場合によっては外から白い部分が見えることもあります。棍毛になっている状態では毛乳頭がすでに毛根から分離しているので、脱毛処理しても効果がありません。次の成長期まで待つ必要があります。針が入っていかないからといって、無理に長時間電流を流したりしないでください。
(棍毛は次の成長期の毛が出てくるまで毛穴を確保する役割も果たしているので、自然に抜けるまでは抜かずに剃るのが望ましいとされています。自然に抜ける直前の棍毛は、新しい毛がその奥に生えていることが多いので抜いても問題は起きにくいのですが、体質により埋没毛を生じるリスクがあります。でも人情として抜いてしまうものですが…。)
また、毛の成長期と休止期の長さは部位によって異なり、休止期の毛の抜けやすさも違うので、最初は見えている毛の大部分が休止期の毛ということもあります(例えば陰毛では7割といわれています)。したがって最初は棍毛ばかり抜く羽目になるかもしれませんが、1,2ヶ月おきに脱毛を繰り返すと、見える毛はほとんど成長期の毛に抜け変わっているので、どんどん永久脱毛の効果が出てきます。脱毛を始めたばかりの最初の段階では休止期の毛が多いため、針がうまく入らずに自分は針脱毛に向いていないんじゃないかと思ったり、抜いても抜いても新しい毛が生えてくるように感じたりして不安になるかもしれませんが、成長期の毛がほとんどになると急速に永久脱毛の効果を実感できるようになるので、あせらずに取り組んでください。
針を差さずに成長期の毛と休止期の毛を見分けるには、まずその部位の毛を全部剃るか非常に短く切り、1週間程度放置して、長く伸びた毛が成長期の毛だと判断します。休止期の毛はほとんど伸びません(徐々に押し出されてくるので、わずかに伸びたように見えます)。休止期の毛は自然に抜けるまで剃ることを続けるか、リスクを承知の上で抜いてしまうかのどちらかになります。
一度全部抜いてしまった箇所に新しく生えてきた毛は、間違いなく成長期の毛なので、休止期に入る前に必ず処理してください。外から見えるところ・気になるところなら見つけしだい処理しても構いません。あまりに期間を空けすぎると、その毛も休止期に入ってしまい、元の木阿弥になります。
一つの毛穴に電流を流し過ぎないように注意します。電流を流している間ブザー音が鳴りますが、数秒後にいったん止んで、電流もいったん止まります。しかしそのままにすると再びブザー音が鳴り電流が流れます。電流をあまりに長時間(ダイヤルを大きく回して1分間など)流し続けると、毛穴周辺が白く変色したままになることがあります(火傷のケロイドと同様)。乾電池駆動だからといって威力を馬鹿にしないように!
電流を流すには、針とは逆の電極を体につける必要があります。この対向電極は、針を収めたペン型のプローブの中央にある金属バンドです。ここに触れることで針から体を通って電流が流れるようになります。電流が流れるように、食塩水で湿らせた指で触ることになっています。本体には電流を調節するダイヤルがありますが、同じダイヤルの位置でもこの塩水の濃度が濃いほど電流がよく流れるようになります。電流が大きいことは、ピリピリとした痛みが大きいことですぐわかります。
残念なことにプローブと金属バンドが一体化しているため、あまり操作性はよくありません。針を毛穴に差し込んだ後で金属バンドに触れるのが理想ですが、プローブを支える指が金属バンドにすぐ触れやすいので、操作がなかなかうまくできません。私は金属バンドにリード線を取り付けてビニールテープで固定し、リード線の反対側に金属板をつけてそれを塩水で湿らせた足で踏む、ということをしていました。こうするとフットペダル感覚で電流を流すことができ、両手でしっかりと毛穴に針を差し込む操作ができるので便利です。(本来の使い方としては、電流調節ダイヤルを弱くした上で、塩水で湿らせた指で金属バンドに触れたまま針を皮膚に滑らせて(この時電流は流れない)、針が毛穴に入ってからグルグルとかき回すようにすれば針が水分の多い毛根まで届き、初めて電流が流れ始めます(この機械には電気抵抗を検出する回路が内蔵されていて、ある程度以下に電気抵抗が小さくなってから初めて電流が流れ始めるように制御されています)。しかしそれでは長い時間(15秒以上)がかかるので脱毛に慣れてきて痛みに耐えられるようになると、電流ダイヤルを最大限に回して短時間(5秒程度)で処理したくなりますが、この時金属バンドに触れたまま操作すると、針が毛穴の浅い位置に入っただけで電流が流れ始めてしまいます(その方が針が入りやすい場合もありますが)。もう一つの操作性の悪さは、指を塩水で濡らしすぎてプローブ先端部にしずくが垂れてしまうと金属バンドと針が食塩水で直接導通してしまうため毛穴に電流が流れなくなります。それを避けるには指の湿り気を少なめにしなければなりませんが、そうするとすぐ乾燥しやすいので頻繁に指を湿らせねばならず面倒なのです。ただしこの点については食塩水を含ませた脱脂綿を金属バンド部にあてがって塩水を常に補給するという工夫をされている方もいて、効果的な方法と思います。)私は後には本体を分解してリード線と手元スイッチを内部の基板から直接引き出す改造をしていました。(同様に、通電を示す「ピーッ」というブザー音を小さくするために本体内部に固定されている圧電素子のスピーカーを外してスポンジでくるんで浮かせて設置していました。音が全くしないのもまた不便なので)
なお、本体の中央にある長方形の金属プレートは、プローブの金属バンドと同じ電位(プラス極)です。このプレートにプローブの針で軽く触れると、電流回路が一瞬形成されてブザー音が鳴り、電池残量の確認ができるというものです。このプレートのもうひとつの利用方法は、うなじなどの自分で針を挿しにくい所を脱毛するとき、身近な親しい人に手伝ってもらってその人に針を挿してもらい、自分は本体のそのプレートに触れる、という利用方法です。
プローブの先端から出ている針の長さは、約3mmです。針は毛穴の中の水分を電気分解するのが目的なので必ずしも毛根の底まで届く必要がある訳ではありませんが、陰毛のように深い毛穴にはあまりに短すぎます。私はプローブの先端の金属パイプ(約3mm)をDIY店で売っているダイヤモンドヤスリで削って1mmくらいに縮めました。その結果針の長さは5mmくらいになり、毛穴の奥まで届くようになりました。上の写真をよく見ると左の方の針が少し長いのがわかると思います。ちなみに、針の先はとがっていないし針はスプリングで支えられていて少し強く押すと引っ込むので、毛穴に深く差し込んでも怪我はしません(実際には針が毛穴の底に届くと毛穴の伸びや肌の伸びのほうがずっと柔らかくて大きいのでスプリングが働くまでもなく、いくら押しこんでも毛穴の底を突き破ることは不可能です)。
衛生には十分気をつける必要があります。針は一回ごとに薬局で売っている消毒用エタノール(アルコール)を含ませた脱脂綿で拭きます。肌も一回ごとにアルコール脱脂綿で拭き、汗が毛穴に入ったりしないように気をつけます。お医者さんが注射をするときの注意と同じようなものです。慣れてくると一回に(抜く前に)数本ずつ処理できるようになりますが、肌も針もこまめに消毒してください。毛穴の腫れが引くまで(数時間)は入浴もしない方がよいと思います。使用後も、プローブ先端部を外して針を取り出し、よく拭いておきます。脱毛後に毛穴に少し血がにじんで小さいカサブタになることもありますが、清潔にしていれば自然に取れ、肌に影響はありません。この脱毛器は毛穴の中の水分を電気分解するという性質上、水分をたっぷり摂って入浴も先に済ませておくのがよいと思います。
永久脱毛は、とても根気のいる作業です。一回で全部きれいになるわけではなく、一部しかできないでしょうし、脱毛した部位でも休眠していた毛は数ヶ月以内に生えてくるので、また脱毛しなければなりません。それでも、同じ部位を数ヶ月ごとに脱毛していると、毛はどんどん少なくなり、陰毛だと長くても2年程度でまったく生えてこなくなります(陰毛の毛周期は最長で2年程度あります)。毛周期の位相も毛によってバラバラなので、最初の数カ月はコンスタントに一定量の毛が生えてきます。これを見て「効果が感じられない」と言わずに確実に脱毛していくことが、永久脱毛を最短で完成させる道です。
かつてあれほどモジャモジャだった部位がスベスベになっているのを見て触って実感するのは至福のひとときです。
ぜひ頑張ってムダ毛のないお肌を手に入れてください。上記のレビューが多少なりとも参考になれば幸いです。
なお、医療機関などで行う針脱毛と違ってこの脱毛機の針は根元が絶縁されていませんが、それには理由があります。
この脱毛器の原理は「電気分解法」と言って、針脱毛の一番古くからある方法です(英語では "electrolysis" といいます)。「電気針脱毛」と呼ばれることもあります。電流に直流電流を使うことが特徴です。
脱毛の原理は、針をマイナス極として直流の電流を流すことで、毛穴の中の水分を電気分解するものです。
針から電子が放出され、水を水素分子(気体として分離)とアルカリ基(水酸基)に分解します。
2H2O + 2e- → H2 + 2OH-
強いアルカリ液で毛乳頭を死滅させるというものです(pH の高いアルカリ液にはタンパク質などの有機物に対する腐食作用があります)。
脱毛中に、毛穴から小さな泡が出てくることがあります(気体の水素ガスです)。
電気分解ですので、熱は出しません。毛穴の表面が焼けるということはありません。ただし電流をあまりに長時間流すと、電流による損傷(電気火傷)の危険はあります(白っぽくなります)。
また、針はマイナス極なので損耗しません。
ちなみに対向電極側(プラス極)は酸性になり、電子を引き抜かれた金属原子が陽イオンになって溶け出して表面が錆びたようになります。陽イオンは一般に有毒なので指を舐めたりしないでください。(濃度的には直ちに健康を害するほどではありませんが)
またこの脱毛法は、化学物質を生成してその化学反応(腐食作用)を利用する方法なのでエネルギー効率が極めて高く、熱を発生させる方法に比べてはるかに小さな消費電力ですみます。
一方、電気分解法の欠点は、時間がかかることです。毛一本に最低でも5秒程度は必要です。
この欠点を補うため、熱を利用する交流法が生まれました。針の周囲を交流電流で熱して毛根を熱により破壊するものです。
したがって破壊の原理はレーザー光によるものと同じです。問題点は、針を毛乳頭までしっかり届かせる必要があることと、針が接する部分全体が熱による火傷を負うことです。毛穴の表面の表皮も損傷し、跡が残ることがありました。
しかし時間は一秒以下の短時間で済みます。
商業的に行う場合、いかに短時間で多くの施術をこなすかが重要なので、交流法が主に利用されます。
交流法では、表皮に熱を与えないように針の根本を絶縁したものを使用する「絶縁針脱毛」が主流です。
そういうわけで、電気分解法で使う針が絶縁されていないのは正常です。熱を出さず表皮を損傷しないからです。
上記の家庭用針脱毛器は現在日本国内では販売されていませんが、個人で海外から購入することはできます。参考までに、海外の通販サイトから針脱毛器を購入する場合の操作例を解説付きで掲載しました。
従来日本国内または海外で販売されていた家庭用針脱毛器の取扱説明書を参考までに掲載します。これらの製品はすでに販売を終了しています。